今、海外では、日本発祥の森林浴について、多くの研究活動と専門機関によるリサーチがなされ、日本人が長い間信じてきたことが正しかったということが、科学的に実証されています。
自然環境の中で過ごすことで、私たち人間は、さまざまな恩恵を受けます。
今回の記事では、科学をわかりやすく伝える先鋭のサイエンス・ライター、シドニー・スプラウス氏の記事をもとに、アウトドア体験で得られる効果について、ご紹介します。
自然の中で過ごすことの重要性 10の理由
出典:Ask the Scientists
10 REASONS WHY BEING OUTSIDE IS IMPORTANT
今日(こんにち)のパワフルなテクノロジーの世界では、多くの人がシンプルに生きることや、自然に還ることを強く求めています。
野外レクリエーションの健康上の利点を体験するには、パソコンやスマートフォンなどの電子機器の電源を切って、現生自然の中でエネルギー・チャージする必要があります。
自然がもたらしてくれるありとあらゆるものに浸り、吸収することができる人は、なぜ外で過ごすことが重要なのかをわかっています。
つまりそれは、健康に良いからです。
スマートフォンや自家用車が登場し普及するずっと以前から、日本では「森林浴」を国民的な健康プログラムの重要な一部と考えていました。
森林浴とは、文字通り、森の中でお風呂に浸(つ)かることではありません。
この場合の「浴」には、新しい意味が込められています。
つまり、森林浴とは、自然環境に身を浸(ひた)すこと、という意味になります。
このコンセプトは、日本の森林浴(森林療法)に由来し、その歴史は1982年にまで遡ります。
(訳注:森林浴は、1982年に、当時の林野庁によって提唱されました。)
30年以上が過ぎても尚、森林浴が目指している目標は、自然の癒しの力を人々にもう一度ご紹介することです。
多くの研究活動と専門機関によるリサーチは、日本人が長い間信じてきたことが正しかったと確証しました。
そして、自然は、さまざまな方法で、ウェルビーイング、つまり、幸せで健康な状態をもたらすのです。
米国では、特に首都圏で、森林浴の人気が高まっています。
セラピー的なハイキングと自然散策を総合して、個人、家族、そして、友人同士で、森に連れて行ったりします。
しかし、ウェルビーイング、つまり、心身の健康を改善するためにアウトドア体験で成し得ることは、森林浴だけではありません。
自然の恩恵を受け取ることができる方法はたくさんあります。
言うまでもなく、それにはまず、手始めに携帯電話を置くこと、そして、アウトドアで経験することから始まる、ということを、あなたならもう既におわかりでしょう。
あなたとご家族の健康を改善するために、野外で過ごすことがなぜ重要なのか、その10の理由がここにあります。
今から、それを一緒に見ていきましょう。
1. ストレス解消
外に出ることで、仕事や学校のストレスから解放されやすくなります。
ストレスは健康的な心と免疫システムをボロボロにしてしまいます。
職場や学校での高いレベルのストレスは、うつ病、肥満、高血圧と関係しています。
ストレス管理がうまく機能していない場合、それは不健康を引き起こします。
しかし、幸いなことに、近くの裏庭に行けば、あなたはすぐにストレスを解消することができます。
自然の中で時間を過ごすことによって、10代の若者も成人も、ストレスが軽減されます。
外で過ごした時間が長いほど、ストレスホルモンのコルチゾールの血流レベルは低下します。
そして、学生たちは原野でのリトリートから戻った後も、これらの低いコルチゾールレベルを、数日間、維持することができました。
この結果は、定期的な野外での旅行が、ストレス管理の確かな方法であることを示唆しています。
自然の中での経験は、少ない費用で誰でも実践することができます。
次の長い週末には、都会から離れて旅をして、自然の中で過ごす時間を選択してみましょう。
きっと、ストレスによる負担が減り、元気を取り戻すでしょう。
専門家からのアドバイス:
自然や植物と接することは、より充実した仕事の満足度を高めるためのサポートになります。
窓が見える席にいるオフィスワーカーは、仕事に対する満足度が高く、ストレスが少なくなります。
2. 免疫の強化
室内で過ごしていると、あなたの免疫の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
免疫システムは、定期的な負荷が掛かる時に最もよく働きます。
しかし、屋内で時間を過ごしても、それは起こりません。
参考記事:THE IMMUNE SYSTEM: YOUR BODY’S GUARDS
自然と健康的にふれあうことは、あなたの身体に負荷を掛けて免疫抵抗するための準備をするのに役立ちます。
その仕組みは次のとおりです。
2010年に発表された研究では、免疫機能に対する森林浴の効果を評価しました。
森林へ3日間の旅行をした日本人の成人グループでは、彼らの血中の白血球の数が増加していることがわかりました。
白血球のこれらのレベルは、森での冒険の後、30日間以上、上昇し続けました。
白血球は、あなたの免疫システムにとって非常に重要です。
白血球は、抗体の助けを借りて、病原体や有害な侵入者を認識し、身体が細菌と闘えるようサポートします。
自然を旅することによる免疫力の向上は、あなたが健康だと感じ続けるのに役立ちます。
活動的な大人や成長期の子供たちにとって、免疫力の向上は健康的なライフスタイルにおける貴重な資産です。
定期的に野外を旅して、本来生まれながら持っている、自然な殺菌力を強化しましょう。
参考記事:REGULAR EXERCISE IS ASSOCIATED WITH HEALTHY IMMUNE FUNCTION
3. 注意力の向上
一般集団において、自然環境に晒されると注意力がほぼ一様に高められることが、研究で明らかになっています。
2009年に発表されたある研究では、注意欠陥のある子供たちにも同じことが当てはまることがわかりました。
その研究によると、近くの公園を歩いて20分間過ごすだけで、ADHDの子供たちの注意力が高まりました。
このいわゆる「自然線量」、つまり、自然環境に暴露されることが、子供たちの注意力不足に対するより自然な解決策であるという証明になるかもしれません。
大人の注意力でも同じ効果が見られます。
オフィスの窓から自然の景色を眺めたり、屋外で仕事の休憩を取ることで、生産性と集中力を高めることが証明されています。
フォーカス力と創造性の大幅な向上のために、より長期間、森に滞在してみましょう。
創造的な問題解決と認知機能は、アウトドアでの冒険に数日間費やした後で、ほぼ50パーセントも向上する可能性があります。
原生自然でリトリートとして滞在することは、人生の大きな課題や個人的な目標に取り組むために役立つかもしれません。
外で過ごすことがなぜそれほどまでに重要なのか、もしも疑問に思っているならば、ぜひ、自然の中で過ごしてみてください。
きっと、その体験は、あなたの創造性を高めてくれることでしょう。
4. 健康的な食材を育てるのに役立つ
外に出るための趣味をお探しですか?
ガーデニングは、屋外で過ごす時間を増やしたい方に最適な方法です。
それは、外で過ごす時間を確保するだけでなく、ヘルシーな果物や野菜を収穫する機会を定期的に提供します。
屋外でのレクリエーションは、長い間、健康的なライフスタイルと関連づけられてきました。
しかし、そればかりではありません。
ガーデニングはまた、その作業によって収穫されたものが健康的な食材になるという意味において、
自然からの贈り物が得られますし、同時に、身体を動かす機会にもなります。
ガーデニングと健康については、以下の記事が参考になります。
参考記事:GROWING HEALTH IN THE GARDEN
5. 心を落ち着かせる
不安やうつ病は、人を無力にしてしまうことがあります。
精神疾患に対処することは困難であり、その方法は人によって異なります。
ほとんどの医師やセラピストは、治療や薬に加えて定期的に運動するようお勧めします。
医師が勧める屋外での運動をすることは、気分を改善しながら、感情的・精神的な苦痛を和らげるのに役立ちます。
私たちの身体が自然界で過ごす必要があるのは、いくつかの身体的反応があるからです。
屋外に出て、自然の中で座ると、血圧が下がり、心拍数が下がり、コルチゾール値が下がる可能性があります。
外で過ごすことで、身体がゆったりし、平和で落ち着いた気持ちになります。
同じように、心(マインド)にも作用します。
外で過ごすことで、気分が良くなり、不安感を軽減します。
自然の中で集中することができ、集中力が向上することでストレスや不安の感情に対処しやすくなります。
また、外を散歩して過ごした後は、より健康的な恩恵を受け取ることができます。
平和な心、そして、精神的にクリアーで明晰であること。
これが、外で過ごすことが重要である理由になります。
あなたのメンタル・ヘルスケア対策に、自然の中で過ごす時間を付け加えてみるのも良いでしょう。
6. 体重管理に役立つ
自然は、美しい景色を見るチャンスを与え、新鮮な空気を吸い込む機会を提供してくれます。
なので、屋外に出て行えるような運動管理を選択してみると良いでしょう。
米国疾病管理予防センター(CDC, The Center for Disease Control and Prevention)の調査によると、アメリカ人の成人の3分の1以上が肥満であることがわかっています。
運動と適切な食事は、肥満の拡大を予防するための最も効果的な2つの方法です。
公園を散歩すると30分ごとに149カロリー、自転車に乗ると30分ごとに372カロリーを、消費することができます。
子供たちが外で運動することを奨励するために、家族で体験することのできる楽しい野外活動を見つけてみましょう。
たとえば、ウォーキング、サイクリング、ランニングなど、外で遊ぶ時間を増やして、肥満のリスクを減らしましょう。
参考記事:LIFESTYLE VS. MEDICATION: WHICH IS MORE POWERFUL FOR MAINTAINING A HEALTHY WEIGHT?
ジムで運動するのもいいのですが、できれば外で運動をするようにして、自然がもたらすすべての健康上の利点を楽しんでみてください。
7. 短期記憶が良くなる
自然の中で過ごすことは、たとえば、誰かの名前を覚えていることだったり、自分の鍵を忘れずに持つことや、そして、授業でより良いメモを取れる取れる答えになるかもしれません。
短期記憶と作業記憶の両方が、外で過ごした時間によって改善できるという科学的実証が増えてきています。
ミシガン大学では、この理論を裏付ける簡単な実験が行われました。
2つのグループの生徒は、記憶力テストを受けた後、庭園または都市部の道路を散歩するよう割り当てられました。
散歩の後、参加者は再び記憶力テストを受けました。
庭園を散歩した人たちは、得点が20パーセント改善しました。
一方で、市内の道路を歩いた参加者には、一貫した改善は見られませんでした。
自然の景色と庭園の景色は、私たちの心を落ち着かせ、集中力を高めるのに役立ちます。
都会の環境は、交通量、街の騒音、街灯、そして、たくさんの人々で溢れています。
こうした雑踏にいると、さまざまな物事に注意が向きます。
そして、集中力が低下し、今、自分が学んだことを思い出すことさえも難しくなります。
なので、平穏で自然な環境の中で新しい情報を熟考することは、あなたの短期記憶を高めるために役立つかもしれません。
参考記事(英語版):FOOD FOR THOUGHT—NUTRIENTS FOR BRAIN HEALTH
参考記事(日本語訳):脳の健康 食べ物と思考とエピジェネティクスな秘密
8. 視力の向上
外で過ごすことが重要である理由が、もう一つあります。
それは、目、視力についてです。
オーストラリアの学校に通う子供たちを対象とした研究では、外で過ごした時間とより良い視力に関連性があることがわかりました。
研究で追跡調査した2,000人の子供たちのうち、外で遊ぶ時間が多かった子供たちは、近視になる危険性を大幅に減らしました。
これは、野外活動が子供の目を保護する効果があることを示唆しています。
室内でスポーツをして時間を過ごした子供たちには、同様の効果が観察されなかったので、これらの結果は驚くべきものです。
新鮮な空気と日光を浴びることのできる屋外で過ごす体験は、室内での同等の身体活動以上に成長期の目を保護します。
薄暗い室内の照明は、若い世代の目にとっては画像に焦点を合わせるのを困難にします。
これにより、凝視したり目を細めたりしながら画像を頑張って見ようとする原因になります。
屋外の十分な光は、子供の目が必要以上に頑張って働くのを防ぎます。
なので、子供の遊ぶ時間と運動を奨励するときは、外で楽しく遊びながら、子供の目の健康が保たれるようにしてあげると良いでしょう。
9. 自然体験不足障害(自然欠乏症候群)の予防
私たちはこれまで以上に多くの時間を室内で過ごしています。
コンピュータ、タブレット、携帯電話、そして、スマホアプリのゲームなどは、私達の注意力を消耗させ、自然の中で過ごす時間の大切さを忘れさせてしまいます。
これは、とくに子供たちにとっては体に悪いものです。
外で遊ぶことは、子供の創造性を促し、注意力の及ぶ時間を築き、探求したいという好奇心や欲求を高めます。
たとえば、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
リチャード・ルーブは、彼の著書 『あなたの子どもには自然が足りない』(早川書房/春日井昌子・訳、原書:Richard Louv, “Last Child in the Woods: Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder”)の中で、
子供の成長期におけるパターンを解説しています。
ルーブは、子供たちが室内で過ごす時間が長すぎると何が起こるかを説明するために、自然体験不足障害(nature-deficit disorder)という用語を作りました。
また、最近の調査結果によると、8〜18歳の子供たちは、毎日6時間以上、電子メディアを使っています。
2002年に発表された研究では、8歳の子供たちは、近所の植物や動物よりも、むしろ、ポケモンのキャラクターを識別できる、と発表しました。
子供たちが外で過ごす時間が少なくなるにつれて、不健康な習慣が形成されてしまいます。
外で過ごす時間が少ない子供は、慢性的な健康問題を発症する危険性があります。
糖尿病、高血圧、肥満、そして、うつ病は、座りっぱなしの室内生活にありがちな症状です。
あなたの子供や家族が、健康的な習慣を身につけることができるよう、電子機器を脇に置いて、外で遊べるよう、元気づけてあげましょう。
10. 寿命を伸ばす
2015年の調査では、108,630人のアメリカ人女性を対象に、自然と長寿の関係を調べました。
公園、芝生、樹木、そして、森林の近くに住んでいた女性は、自然から遠く離れて住んでいる女性よりも、死亡率がかなり低いことがわかりました。
この結果は、都市部や農村の設定に関係なく、死亡率の低さは保たれました。
植生近くでの生活に関連した長寿命は、いくつかの要因によって引き起こされる可能性があります。
大気質は寿命を延ばすことが知られており、植生が密集している地域ではより長寿になる傾向があります。
公園や自然遊歩道の近くにいると、散歩やジョギングなどで、より頻繁に身体を動かしやすく、結果的に運動が促進されるため、心臓の健康を維持するのに役立ちます。
外で時間を過ごすことで、たとえばストレスが解消され、人付き合いが穏やかになったり、野外で出会う人々とつながり合う機会ができたりします。
その結果、社会との関わり合いが増えるため、メンタルヘルス、つまり、精神的な問題を改善することができるようになります。
正確な原因が何であれ、屋外に出ることは、あなたがより幸せでより長く生きるのに役立つでしょう。
そして、これが外で過ごすことが重要である最終的な理由になります。
なので、もしもこれから住む場所を決めるときは、あなたと家族が定期的に自然にアクセスできる場所を選ぶようにしましょう。
健康になろう、アウトドア体験を楽しもう!
さあ、今日は、思い切って外で過ごして、アウトドア体験の健康上の利点を活用する時間を見つけてみましょう。
たとえば、スマホやパソコンを使用して過ごした時間をサイクリングに充ててみたり、地元の公園まで散歩してみるのはいかがでしょうか。
または、新しい趣味として、森林浴や園芸を始めてみるのも良いかもしれません。
そして、アウトドア・レクリエーションは、一人で楽しむこともできますし、家族と一緒に楽しむこともできるということを、どうか忘れないようにしましょう。
外で過ごす方法に間違った方法はありません。
自然の世界を探索することによって得られるものは、今回ご紹介したものだけではありません。
今回、この記事をお読みいただいたあなたなら、今、なぜ外で過ごすことが重要なのか、もうお分かりのはずです。
さあ、自然ともう一度つながり直す時が来ました。
あなたの心と身体は、やがて自然との再接続がもたらす恩恵を感じるようになるでしょう。
出典:Ask the Scientists
10 REASONS WHY BEING OUTSIDE IS IMPORTANT
原文の著者について
シドニー・スプラウス氏 (Sydney Sprouse)は、オレゴン州フォレストグローブ在住のフリーランスのサイエンス・ライターです。
彼女は、ユタ州立大学(Utah State University)の人間生物学の学士号を取得し、学部の研究者および執筆者として働いていました。
シドニー氏は、生涯に渡って科学の学習者であり、現代の科学研究をできる限り効果的に解説することを目標としています。
彼女は、人間生物学、健康学、栄養学に関心を持って執筆しています。
※読みやすい日本語文にするために、科学記事の翻訳に際して許容範囲内で加筆または付記させていただいた箇所があります。原文につきましては出典の英文記事をご覧ください。
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